遺産相続の確定申告は不要? 確定申告が必要なケース・注意点を解説

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遺産相続でお金を取得したときに、「確定申告は必要か?」と疑問に思う方もいらっしゃることでしょう。

結論からいいますと、遺産相続で取得した財産の価額によっては相続税の申告が必要な場合もありますが、原則的に所得税の確定申告は不要です。しかし、ケースによっては相続をきっかけとして確定申告が必要となる場合もありますし、被相続人がすべきだった確定申告を相続人がしなければならない場合もあります。

この記事では、遺産相続の確定申告が原則不要である理由や、確定申告が必要なケースについて、注意点と併せて解説します。

この記事でわかること

・遺産相続の確定申告が原則として不要である理由
・相続税の申告と所得税の確定申告の違い
・遺産相続で確定申告が必要となるケースや注意点
・準確定申告が必要となるケース

遺産相続の確定申告は原則不要

遺産相続の確定申告は原則不要

遺産相続で取得したお金などの財産は「所得」ではないので、原則として所得税の確定申告は不要です。所得とは、給料や事業、不動産の賃貸、各種投資などで得られた収入から経費を差し引いた金額のことです。

亡くなった方の財産を相続で取得した場合には、所得税ではなく相続税の課税対象となります。所得を得た場合には所得税、相続財産を取得した場合には相続税がかかることがありますが、所得税と相続税が二重にかかることはありません。

なお、相続税申告が必要となるのは、遺産総額が基礎控除額を超える場合です。基礎控除額は、次の計算式で算出します。

「遺産に係る基礎控除額」= 3,000万円 +( 600万円 × 法定相続人の数 )

相続税の申告については、こちらの記事で詳しく解説していますので、必要に応じてご参照ください。

相続税申告について詳しく知りたい方は以下の記事もご覧ください。
【相続税申告とは?完全ガイド】控除や要否などを分かりやすく解説

遺産相続の確定申告が必要になる6つのケース

遺産を相続しても所得にはなりませんが、遺産を取得することによって所得に影響が及び、確定申告が必要になるケースがあります。具体的には、次の6つのケースでは確定申告が必要です。

相続した遺産を寄附したケース

相続した遺産を国や地方公共団体、公益財団法人などに寄附した場合に、一定の要件を満たせば所得税および住民税の寄附金控除の適用を受けられます。寄附金控除の適用を受けるためには、確定申告が必要になります。

確定申告書を提出する際には、寄附した団体などから交付を受けた寄附金の受領証(領収書)を添付しましょう。

遺産を寄附した場合の確定申告は義務ではありませんが、確定申告をしなければ節税のメリットが得られないことに注意が必要です。

被相続人の事業を受け継いだケース

被相続人が営んでいた個人事業を受け継いだ場合は、相続人に事業所得が生じるようになるため、その後は確定申告が必要になります。

以前から被相続人と一緒にその事業を営んでいて確定申告をしていた場合は、通常どおり翌年の2月16日から3月15日までの間に確定申告をします。

相続人が新たにその事業を営むことになった場合は、事業を承継した日からその年の12月31日までに得た事業所得について、翌年の2月16日から3月15日までの間に確定申告をします。

青色申告をしたい場合は、相続人が「開業届」や「青色申告承認申請書」を納税地を管轄する税務署へ提出しなければなりません。

開業届の提出期限は、事業を承継した日から1ヶ月以内です。

青色申告承認申請書の提出期限は、被相続人も青色申告をしていた場合は以下のとおりです。

・被相続人の死亡日が1月1日~8月31日の場合…死亡を知った日から4ヶ月以内
・被相続人の死亡日が9月1日~10月31日の場合…その年の12月31日まで
・被相続人の死亡日が11月1日~12月31日の場合…翌年の2月15日まで

被相続人が白色申告をしていた場合は、相続人の青色申告承認申請書の提出期限は以下のようになります。

・1月15日までに事業を承継した場合…青色申告の承認を受けようとする年の3月15日まで
・1月16日以降に事業を承継した場合…業務を承継した日から2ヶ月以内

青色申告承認申請書の提出が期限までに間に合わなければ白色申告をしなければならず、所得税の納税額が大きくなる可能性があることにご注意ください。

収入が発生する遺産を相続したケース

被相続人が所有していた賃貸マンションやアパート、駐車場などの賃貸不動産を相続した場合は、相続人に賃料収入が発生するようになります。これが所得となるため、その後は確定申告が必要になります。

遺言書で賃貸不動産を相続する人が指定されている場合は、その人が確定申告をします。

遺言書がない場合には、遺産分割協議が終了するまでは遺産が相続人全員の共有となることに注意が必要です。この場合、賃料収入も各相続人が法定相続分に応じて取得することになります。年間の所得が20万円を超えると確定申告をする必要があるため、場合によっては相続人全員が確定申告をしなければならないケースもあります。

遺産分割協議が成立して賃貸不動産を相続する人が決まったら、その後の賃料収入はその人の所得となり、その人が確定申告することになります。

なお、青色申告をしたい場合には、先ほど「収入が発生する遺産を相続したケース」でご説明したとおり、一定の期限までに青色申告承認申請書を提出しておくことが必要です。

相続した遺産を売却したケース

相続した遺産を売却して利益が発生した場合は、譲渡所得に応じて確定申告をする必要があります。

譲渡所得とは、資産を譲渡することで得られる所得のことです。簡単にいうと、その資産を取得するときに要した費用よりも高額で売却した場合に生じる可能性がある所得です。譲渡所得の金額を計算する際には、譲渡によって得られた収入から取得費だけでなく、譲渡費用と特別控除額も差し引くことができます。

譲渡費用とは、資産を売却するために要した費用のことです。不動産を売却した場合なら、仲介手数料や測量費、売買契約書に貼る収入印紙代などが譲渡費用に含まれます。

譲渡所得の特別控除には、さまざまなものがありますが、例えば、被相続人が住んでいた自宅(居住用財産)を売却した場合には収入から3,000万円を差し引けます。

さらに、相続税を支払った場合には、一定の条件の下に支払った相続税額の一部を取得費に加算できます。この制度のことを「取得費加算の特例」といいます。

なお、被相続人がその財産を取得するために要した費用が不明の場合は、売買代金の5%に相当する金額を取得費として譲渡所得を計算することが認められます。

未支給年金や死亡保険金を受け取ったケース

被相続人が亡くなった後に、未支給年金や死亡保険金を相続人が受け取った場合は、それが相続人の所得となって確定申告が必要になるケースがあります。

未支給年金を受け取った場合は相続人の一時所得となりますが、一時所得には最大50万円の特別控除があります。したがって、その年における相続人の一時所得が未支給年金を含めて50万円を超えた場合にのみ、確定申告が必要になります。

死亡保険金については、受取人である相続人自身が保険料を負担していた場合に、その相続人の所得となります。被相続人が保険料を負担していた場合は相続人の所得にはならず、「みなし相続財産」として取り扱われることから、相続税の課税対象となります。

相続人が保険料を負担していた場合で、死亡保険金を一時金として受け取った場合は一時所得となるため、未支給年金と同様に最大50万円の特別控除が適用されます。死亡保険金を年金として受け取った場合は雑所得となるので、1年ごとに必要に応じて確定申告をしていくことになります。

相続した遺産を換価分割したケース

換価分割によって遺産を分割した場合も、遺産の売却によって譲渡所得が生じると確定申告が必要になります。

換価分割とは、不動産などの遺産を特定の相続人が取得するのではなく売却し、得られた売却代金を相続人間で分割する方法のことです。

遺産を売却する前に、遺言書や遺産分割協議などによって各相続人の取得割合が決まっている場合は、その取得割合に従って譲渡所得を分配し、各相続人が確定申告します。この場合には、確定申告書を提出する際に遺言書または遺産分割協議書を添付することが必要です。

遺産を売却した時点で各相続人の取得割合が決まっていない場合は、譲渡所得を法定相続分に従って分配し、各相続人が確定申告をすることになります。

確定申告の期限までに遺産分割協議が成立した場合は、協議で決めた取得割合に従って譲渡所得を分配し、各相続人が確定申告をすることも認められます。この場合には、確定申告書を提出する際に遺産分割協議書を添付しなければなりません。

換価分割について詳しく知りたい方は以下の記事もご覧ください。
【換価分割とは?】メリット、デメリットや記載例、流れを解説

遺産相続した際は準確定申告をする必要がある

遺産相続をした際は準確定申告をする必要がある

遺産相続した際に、準確定申告をしなければならないケースもあります。

準確定申告とは、亡くなった方の確定申告を相続人が行うことをいいます。被相続人が年の途中で亡くなった場合、1月1日から死亡日までの間に一定の基準を超える所得があれば、確定申告をしなければなりません。しかし、亡くなった方が手続きをすることはできないので、相続人が準確定申告をする必要があるのです。

準確定申告が必要となるのは、次のいずれかに該当する場合です。

・給与以外の所得(退職所得を除く)が合計20万円を超えていた場合
・2ヶ所以上から給与を受け取っていた場合(従たる給与が20万円以下の場合を除く)
・給与収入が2,000万円を超えていた場合
・事業収入や不動産収入、配当収入などで所得があった場合
・公的年金等による収入が400万円を超えていた場合
・生前に不動産や株式等を売却し、譲渡所得を得ていた場合

以上の事由に該当しない場合でも、準確定申告をすることによって所得税の還付が受けられるケースもあります。被相続人が給与などから所得税を源泉徴収されていた場合などでは、各種控除によって所得税の還付が受けられないかを確認してみた方がよいでしょう。

準確定申告をする場合は、相続の開始を知った日の翌日から4ヶ月以内に申告と納税をする必要があります。

その他、準確定申告について詳しくは、こちらの記事をご参照ください。

準確定申告について詳しく知りたい方は以下の記事もご覧ください。
【準確定申告ガイド】必要書類や書き方、手続き方法を解説

 遺産分割協議書の提示を忘れるとどうなる?

遺産分割協議書の提示を忘れるとどうなる?

所得税の確定申告は、各相続人がそれぞれの所得に応じて行うものです。遺産分割協議によって決めた取得割合が法定相続分と異なる場合には、確定申告書を提出する際に遺産分割協議書を添付する必要があります。そうしなければ、税務署には各相続人の所得が判明しないため、法定相続分に従って遺産を分割したものとして所得税を課税されてしまうことになります。

例えば、親が保有していた株式を長男と二男が相続して売却したところ、譲渡所得が生じたとします。分割割合は、長男が親の事業を手伝っていたことから、2人で遺産分割協議をした結果、長男が7割、二男が3割を取得することに決めたとしましょう。

しかし、確定申告の際に遺産分割協議書の提示を忘れると、法定相続分に従い、売却代金を半分ずつ分けたものとして所得税を課税されることになります。

この場合、二男は売却代金を3割しか受け取っていないにもかかわらず、5割を受け取ったものとして所得税を納めなければなりません。その上に、翌年度の住民税や国民健康保険税(国民健康保険に加入している場合)が本来の税額よりも上がる可能性があります。

このように、遺産相続の確定申告では手続きでミスをして困ってしまうケースも少なくありません。上記のケースでは、兄弟で話し合って納税や社会保険料の負担を分担するなどして解決することも可能ですが、ケースによっては無申告加算税や延滞税などのペナルティーを課せられることもあります。

このようなミスを回避するためには、遺産相続の確定申告は税理士に依頼した方がよいでしょう。

相続税の加算税について詳しく知りたい方は以下の記事もご覧ください
【相続税の加算税とは?】過少申告や無申告の場合や課税額を解説

まとめ

遺産相続で確定申告が必要なケースでも、税務署から「確定申告をしてください」と連絡が来ることはありません。それにもかかわらず、確定申告をしなければ無申告加算税や延滞税を課せられてしまいます。

また、遺産相続のケースによっては相続税の申告が必要であったり、場合によっては贈与税が問題となったりすることもあります。税金の問題は複雑でわかりにくいことが多いので、不安なときは税理士に相談してみるのがおすすめです。

岡野相続税理士法人は、相続税専門の税理士法人として、相続に関わる諸手続きをトータルサポートいたします。お気軽にお問い合わせください。

押さえておきたい相続税の知識

申告までの期限が短く、税務調査率が高く、納め過ぎが多い税金です

  • ①被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内に申告が必要。
  • ②5件中1件が税務調査され、9割近い確率で追徴課税が発生している。
  • ③過大な財産評価や特例適用の見落としが原因で、8割が納め過ぎです。
  • ①被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内に申告が必要。
  • ②5件中1件が税務調査され、9割近い確率で追徴課税が発生している。
  • ③過大な財産評価や特例適用の見落としが原因で、8割が納め過ぎです。
  • 相続税申告の期限が短い上に税務調査率が高いことが理由で、たとえ税理士でも安全に過大に申告させてしまうのが相続税です。
    払い過ぎの場合、税務署は指摘しません。払い過ぎたことを相続人は気づかないままです。

    相続税申告を税理士に依頼するか迷われている方はこちらの記事を参考にしてください。

    特に不動産・土地を相続する方はご注意ください

    相続税は、累進課税方式です。つまり、受け継ぐ相続財産が多くなるほど負担が増える仕組みになっています。
    そのため、不動産などの相続財産を、税理士がどう評価するかで、支払う相続税額が大きく変わってくるのです。

    当税理士法人は、国内トップクラスの相続税の還付実績で培った知識と経験から、1つ1つの土地に適した評価を早く正確に行います。
    こうした適正な土地評価が、大きな相続税の節税につながります。

    今後の相続に備えたい方、相続が発生した方は、遠慮なく当税理士法人にご相談ください。
    初回の面談相談(約1時間)を無料にて実施しております。オンラインに対応しているので全国どこでも、海外からでもご相談、ご依頼いただけます。

    相続税専門の岡野雄志税理士
    この記事の監修者
    相続税専門の岡野雄志税理士

    岡野相続税理士法人
    代表税理士 岡野 雄志

    税理士・行政書士
    1971(昭和46)年生まれ
    千葉県成田市出身
    千葉県立佐倉高等学校卒業
    早稲田大学商学部卒業

    岡野相続税理士法人
    代表税理士 岡野 雄志

    税理士・行政書士
    1971(昭和46)年生まれ
    千葉県成田市出身
    千葉県立佐倉高等学校卒業
    早稲田大学商学部卒業

    相続税を専門に取り扱う税理士法人の代表。 2001年、30歳で税理士試験合格。 2005年、34歳の時に、相続税専門の税理士事務所(現・岡野相続税理士法人)を開業。 個人事業時代に、1,900件以上、累計154億円の相続税還付に成功し、日本一の実績を立てる。 2022(令和4)年に税理士法人化。 新横浜、東京駅、新宿の3拠点にて営業している。 特に土地の評価を得意とし、不動産相続の実績は業界でもトップクラス。

    現在までに累計3,000件、200億円の相続税還付に成功する。 全国各地の相続税申告・還付を累計5,904件(2026年3月末時点)以上手掛ける。 著書に『土地評価に強い税理士に頼んだら相続税がビックリするほど安くなりました』(岡野雄志/舟田浩幸 著、株式会社あさ出版刊)、「相続税専門税理士が教える 相続税の税務調査完全対応マニュアル(幻冬舎刊)」など6冊。 相続税関連の執筆や各種メディアから取材実績として、「週刊ダイヤモンド」「週刊現代」等。 ウェブメディア「ダイヤモンドオンライン」「幻冬社ゴールドオンライン」など多数。

    相続税を専門に取り扱う税理士法人の代表。
    全国各地の相続税申告・還付を累計5,904件(2026年3月末時点)以上手掛ける。
    特に土地の評価を得意とし、不動産相続の実績は業界でもトップクラス。
    相続税関連書籍の執筆や各種メディアから取材実績多数有り。

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