「負けるが勝ち」のスタンスで。税務調査の交渉で知っておきたいこと

2018年06月29日 [ ]


税務調査が終わってから早くて2~3週間程度で、相続人の代表者か税理士に調査結果が伝えられます。ただ、調査時期や案件によっては何か月もかかることもあります。

調査が終了すると、税務署は調査結果を記載した検討事項一覧表を出します。これが税務署と相続人の交渉の始まりです。この交渉次第で、税務調査の結果が変わります。

税法にうまく当てはまる事実はごくわずか

税務調査の決着をつけるには、何よりもまず調査官と相続人の双方が納得できる、根拠が明らかで客観的な事実があることが大切です。その事実に対して正しく税法をあてはめれば解決します。

しかし、きれいに決着がつかないことがほとんど。実際には事実を認めるための証拠が乏しくなってしまうことが多く、調査官も相続人もお互いに自分にとって都合のいい事実を主張するばかりでうまく結論を出せません。

ですが、このような問題があるにもかかわらず、多くの場合で相続人側に対して有利に働きます。相続人が申告漏れをしているという明らかな証拠を税務署側が提示しなければならないからです。他の人でも分かるほど明らかな申告漏れに対して交渉の余地はありませんが、決着のつかないグレーゾーンの交渉では税務署側に証拠が足りないため、結果として相続人側がシロになります。

他の税務署で認められた前例を出して交渉すると鬼に金棒

同じような事例にもかかわらず、他の税務署では認められたのに管轄の税務署では認められなかったときは、他の税務署で認められた前例を持ち出して交渉するのもひとつの手です。

まずは「他の税務署では認められた」「前例はこうだった」などと具体的な例を探しましょう。調査官は国家公務員です。全体の秩序を重んじる国家公務員としては、このような前例を挙げられたらノーと言えないはず。

そのためにも、相続税申告で税務署とのやりとりが多い、経験豊富な税理士事務所を味方につけると心強いでしょう。

修正申告は何度でもできる

指摘された分をまとめて修正申告するのではなく、誰から見ても明らかな申告漏れの指摘事項から順番に修正申告をしましょう。

そもそものところ修正申告は何度でもできます。一気にすべての指摘事項について申告する必要はありません。また、一度修正申告をすると、あとで「納得がいかないので争いたい」と不服申し立てができません。修正申告をすると相続人が税務署の決定に納得したと見なされるからです。

だからこそ、自分が納得できて、いくら税務署と交渉をしても勝ち目のない指摘事項から修正申告を始めましょう。納得できないものについては修正申告をせずに更正処分を受けて不服申し立てを。

すべての指摘事項の修正申告をしても、更正処分を受けても、払うべき税額は変わりません。また、更正処分というのは「処分」といっても悪い意味ではありません。しかし、修正申告をしないで更正処分が下されれば不服申し立てができます。ところが、実際には、税務署側としては一度更正処分を下すとそのあとの手続きが面倒になるので修正申告をすすめているのです。つまり、納得がいかなかった分に対して不服申し立てができるのが更正処分で、いざという時の保証にもなります。

修正申告をしても更正処分を受けても、払う税額は変わらないものの、ある程度取り返しがつくかもしれない浮き輪的な役割を果たしてくれるのが更正処分。「長引くのがめんどうだから…」とか「心配ごとをなくしたい」といった理由で一気に修正申告をしたくなる気持ちもわかりますが、慌てて交渉をまとめようとしてすべての要求を納得せずにのみこんでしまうと、交渉次第でなんとかなるグレーゾーンの項目をあきらめることになってしまいます。

グレーゾーンだからこそ相続人は有利な立場に回りやすい

税務調査が入って修正申告を指摘されてしまうと、申告漏れしていた分の税を払ううえにペナルティも課せられるなど、相続人としては不利に回っていると思われがちです。そして、相続税を払う人自体が少なく税務調査を受ける人もそれほど多くない中、相続税を詳しく知らない人にとっての税務調査はTVのドラマやニュースで見るような融通のきかないイメージがあるはずです。

しかし、明らかにわかる不正はごくわずかで、実際には不正かどうかわかりづらいグレーゾーンが多くを占めます。だからこそ、グレーゾーンであることを利用して相続人側が有利になることが大切です。
たとえば、修正申告をせずに更正処分を受ける場合ですが、払う税額は修正申告をしても更正処分を受けても変わりません。しかし、修正申告をしないで更正処分を受ければ、あとで不服申し立てができます。うわべでは税務署の要求に従って追加で税金を払っていると見せかけて、あとでいくらでもグレーゾーンの交渉を修正できるよう仕掛けます。税務調査の交渉は「負けるが勝ち」のスタンスでいきましょう。

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