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「特定事業用宅地等に係る小規模宅地等の特例」が見直されます – 平成31年税制改正

2019年04月29日


平成31年税制改正において、個人事業者の事業承継を促進する目的で相続税・贈与税の納税猶予の新制度が創設されました。この新たな納税猶予制度については、事業用の宅地と事業用の建物、減価償却資産について、税額の猶予をするほか、相続税のみならず生前贈与にも適用可能とする制度です。この制度は、納税猶予割合を100%とするなどかなり思い切った内容となっています。

一方で、個人資産の内に占める土地の割合は比較的高く、この納税猶予を適用することで過度な節税となりかねません。そうならないためにも、相続税における「特定事業用宅地等に係る小規模宅地等の減額の特例」とどちらか片方だけ選択して適用する取り決めとなっています。
これに伴い、「特定事業用宅地等に係る小規模宅地等の特例」については、事業承継の支援という制度主旨を遵守させ、制度の濫用を防止するという観点から、その対象となる宅地の範囲がより制限されることとなりました。

改正前の制度の内容

「特定事業用宅地等に係る小規模宅地等の減額の特例」とは、相続又は遺贈により取得した土地のうち、被相続人等(※1)が亡くなる直前に事業(※2)の用に供していた宅地等で、一定の要件を満たしている宅地等については、一定の相続人が取得した場合には、その宅地等の相続税評価額を400㎡まで80%OFFにできるという非常に大きな減額の特例です。
改正前までの特定事業用宅地等の範囲は、あくまで「相続開始の直前において、被相続人等の事業の用に供されていた宅地」と規定されているのみであり、事業供用が認められさえすれば適用ができていました。

※1)被相続人等とは、被相続人のほか、被相続人と生計を一にしていた(被相続人とお財布が一緒だった)親族が含まれます。
※2)不動産貸付業や駐車場業など貸付事業を除きます。

改正後の制度の内容

特定事業用宅地等の範囲から、相続開始前3年以内に事業の用に供された宅地等が除かれます。
これは、昨年の平成30年税制改正の中の「貸付事業用宅地等」の改正にならい、『相続人等による事業継続を守る』という本来の小規模宅地等の減額特例の趣旨から逸脱した適用(節税目的の駆け込み的な適用など)を防止するための改正です。
要するに、亡くなる直前の入院などのタイミングで個人の遊休地等を無理くりに事業用に転用する様なケースが防止されるわけです。

なお、範囲から除く対象として、以下のケースは除かれています(つまり、下記に該当した場合には、従前どおり小規模の適用ができます)。

宅地等の相続税評価額 × 15% ≦ 宅地等の上で事業供用されている減価償却資産の価額

小規模宅地等の減額の特例だけを切り取ってみると、特定事業用宅地等の範囲が狭まったため、納税者にとって不利な改正内容と感じられるかもしれませんが、税制全体からすると「個人事業者の事業承継税制」とどちらか有利な方を適用できる内容なので、一概に不利とは言い切れません。

適用時期

平成31年(2019年)4月1日以後に相続等により取得する財産に関わる相続税から適用が開始されます。ただし、同日前から事業の用に供されている宅地等については、除外されます。

まとめ

被相続人が個人事業を行っているような場合には、今後は生前から「特定事業用宅地等に係る小規模宅地等の減額の特例」と「個人事業者の事業承継税制」の検討を行っておくべきでしょう。

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