愛するペットに相続させたい。負担付贈与とペット信託のしくみについて

2018年06月08日 [ ]


先日覚せい剤で死亡した「紀州のドン・ファン」こと野崎氏の総資産は約50億円。その財産は55歳年下の妻と6人の兄弟に相続されるようで、それぞれの相続財産をざっくり計算するとこのようになります。

妻:37億5000万円
兄弟(1人あたり):2億円

妻が野崎氏と結婚したのはつい3ヶ月弱前のこと。ほんのわずかな期間で莫大な財産を手に入れてしまったのです。

ところで、そんな野崎氏は、生前「愛犬に遺産をすべてあげたい」と言っていたようです。
通常、相続人になれるのは配偶者や子、父母などの直系尊属や兄弟姉妹だけ。犬や猫といったペットは相続人として指定できないはずです。
とはいえ、そうであってももし、被相続人が生前に「何としてでもペットに相続させたい」と言っている場合はどう対処すればよいのでしょうか。潔くあきらめるよう説き伏せますか?それとも何らかの策を講じますか?

ペットは相続人になれない…

原則として相続人にあてはまるのは、被相続人の配偶者や子、父母などの直系尊属や兄弟姉妹、そして遺言がある場合はそこで指定されている人で、まず「人」であることが前提です。
動物は「物」にあたるため、本来ならばペットを相続人として選ぶことはできません。

ペットを相続人に近い存在にできる2つの方法があった

「自分が死んだあと、愛する犬や猫はどんな人に託されるのだろう…。その人にどんな風に大切にされるのだろう…。もしかしたら自分を恋しがるかもしれない…。」と思うと心配でなりませんよね。動物が好きな人にとって、財産をペットに相続させたいと願う人も少なからずいるはずです。

しかし、相続人になれるのは人だけで、物にあたる動物は相続できないという現実…。とはいえ、ペットを相続人に近い状態にできる方法が2つあります。

負担付贈与を使って遺産をあげる代わりにペットの世話を託す

負担付贈与では、被相続人が遺言で遺産をあげる相手を決めて、その相手に対して遺産をあげる代わりにお願いを託すことができます。
つまり、負担付贈与を利用してペットの面倒をみてほしい人に対して遺産と引き換えにペットの世話を頼めるのです。
また、被相続人に指定された相手が託されたお願いをきちんとやっているかどうかを監視する遺言執行者がいるので遺産の悪用の心配はありません。

しかし、負担付贈与は受ける側にとって重荷となるはず。万が一飼い主の死後に遺言書を読んで自分がペットの世話を頼まれていたことを初めて知ったとなると、すんなりと受け入れるのは難しいですよね。家族に動物アレルギーの人がいたり、ペットを飼えない環境にいるとなったらなおさらです。

そのような場合があるために、負担付贈与を受けた相手は遺産とともにお願いを放棄できます。そのため、遺言でお願いを託した相手がペットの世話をしてくれず、ペットがまったく知らない人に託される可能性があります。

あらかじめ飼い主(被相続人)とお願いを受ける人で約束をしておく

ありきたりな方法ですが、ペットの飼い主(被相続人)が生きているうちに信頼する人にペットの世話を頼むという手も。
これはペット信託といって、あらかじめ飼い主とペットの世話をお願いする相手の間で契約をかわすことです。ペットのエサ代や病院代にあてる遺産を渡して契約がむすばれます。

負担付贈与と違ってペット信託では、被相続人の亡くなる前に契約をかわしているので相手がお願いを取り下げることはほぼありません。ペットの面倒をみてくれる人が絶対にいるという点で安心できます。
一方で、契約をかわした相手が遺産をペットの世話代にあてているかどうかを監視する人がいないため、どんな人に委ねるか見極める必要があります。

アメリカに行けばペットを相続人にできる

通常、ペットは相続人になれないものの、負担付贈与やペット信託といった方法を使えば見かけ上ではペットを相続人にできるようです。
しかし、「紀州のドン・ファン」こと野崎氏のようにペットを溺愛している人にとって、「ペットに相続させたい」というのはむしろ「ペットと一緒にいたい」という気持ちに近いのではないのでしょうか。そのような人たちからすると負担付贈与やペット信託は意味がないように思えます。

そんな中で以前アメリカで資産家が自分のペットにすべての財産(およそ2億7000万円)を相続させた例も。アメリカではペットを相続人にできる法律が州によってあります。もし本気でペットを相続人にしたいのであれば、アメリカに移住といった極端な最終手段もあります。
50億円もの資産を持っていたり「紀州のドン・ファン」と言わしめるほどの野崎氏がもしこのことを知っていたら、はたしてアメリカに移住してまで愛犬に財産をつがせていたのでしょうか…。

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