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必ずしも節税できるとはいえない賃貸経営の現実。将来を見据えた計画を

2018年04月11日

大幅な節税効果と現金収入が魅力の賃貸経営とは?

なぜ賃貸経営が節税になるのか?

相続税の節税対策としてアパートなどの賃貸物件を建築することを、「相続税評価額を圧縮する」と言い表すことがあります。これは、実際に所有している財産の土地に、賃貸物件を建築することで評価額が下がり、それに伴って相続税も少なくなることからきています。
なぜ評価額が下がるかというと、それは「建物や土地を自分の自由にできない」という賃貸物件特有の不便な性質と関連してきます。

「建物や土地を自分の自由にできない」とは具体的にはどういうことでしょうか?
まず注目すべきは、「維持管理」の点です。
オーナーになるわけですから、そのアパートやマンションに何かしらの欠損などがあれば、自分が修繕費用を出さなければなりません。空室ができれば住民募集の広告も打つことになるでしょう。何かとお金がかかるわけです。

また、もし何かしらの原因が生じてアパート経営が難しくなり、賃貸の契約が更新できなくなった時には、最悪そのアパートの住人に立ち退いてもらうことになります。その場合、住人の方が立退きを了承してくれたとしても、立退き費用を支払わなくてはなりません。立退き費用の相場は、明確に定められているわけではありませんが、それによって生じる住民への迷惑料や引っ越し代(新居入居時の敷金・礼金等)、そのほか発生する費用等を踏まえて支払を行うことになります。

また、住人にそこに住み続けるための正当な理由があった場合、立退きに応じないどころか裁判沙汰になることも十分に考えられます。
単純な更地と比べて、このような面倒なことが増えてしまう可能性があるのが賃貸物件なのです。ですから、更地などの土地に比べて賃貸物件の建っている土地の評価額が低くなるのは、当然ともいえるのです。
賃貸物件の建っている土地の評価額は、同じ面積でも更地に比べて低くなるわけですから、もちろん相続税額も下がります。

相続税評価額圧縮の例

具体的な圧縮の例をシミュレーションしてみましょう。

例えば、相続税評価額1億円の土地(更地)に、賃貸物件を建てたと仮定します。
その際、評価額の減額割合は、その土地の所在している地域の「借地権割合」によって異なります。都心部では借地権割合が90%の地域も多くありますが、一方で地方では30%のところもあります。
その地域の借地権割合が仮に70%だった場合、土地の評価額が70%分減額されます。
また、その賃貸物件の賃貸割合(=入居率)によっても相続税の評価額は変わります。要するに空室が少ないほど、減額幅は大きくなっていくのです。

仮に賃貸物件の賃貸割合を、1(=100%)とします。
その上で、賃貸物件のオーナー(地主)が、上記のとおり70%減額できる地域(=借地権割合70%)に住んでいるとしましょう。その場合、相続税評価額は、1億円×〈1-0・7(借地権割合)×0・3(借家権割合)×1(賃貸割合)〉=7900万円となります。

賃貸経営に潜むリスクとは

危険な「利回り」

このように非常に大きな節税効果を得られる賃貸経営ですが、そこには大きなリスクが潜んでいます。
アパートやマンションの建物を建てるためには、億単位でお金がかかります。更地ではなく、すでに家が建っている場合は取り壊しを行う資金や、一部改装などによる費用がかかります。自分の財産でそうした費用をまかなえる人はごく少数であり、多くの場合は最初に多額の借金をすることになります。

莫大な借金をどのように返済していくのか、というオーナーの懸念に対してハウスメーカーが提示するのが、「利回り」です。
利回りとは、投資した金額に対する年間収益の割合のことをいいます。一般的に、利回りが大きければ大きいほど元本に対する収益が大きいわけですから、投資する側としては利回りが大きいほうが儲かるのです。

多くの不動産会社が提示している利回りは、満室時を前提として年間に入る家賃の総額を計算し、それを不動産の価格で割ったものです。
例えば、1000万円出して物件を購入し、年間の賃料の合計が50万円であったときの計算は、50万円÷1000万円=0.05となり、利回りは5%ということになります。

ただし、この利回りには注意すべき点が3点ほどあります。
まず1点目として、相続税以外の諸税が考慮されていないことがあげられます。ハウスメーカーが営業時などに提示する収支計画書には、「所得税」や「住民税」が記入されていません。よって、実際に手元に入ってくる金額というのは、大抵が契約時に提示されたものよりも低くなります。
2点目は、「家賃が常に一定であること」が前提とされている点です。通常、アパートやマンションの家賃というのは、築年数が古くなるにつれて下がっていくものです。もし下げなければ、周りの新築物件に住人をとられてしまいます。
しかしハウスメーカーの計画書では、あまりこういった点が考慮されていません。
3点目は、多くの場合「満室であること」が前提であるという点です。
よっぽど立地環境が良ければ別ですが、人口・世帯数ともに減少し、賃貸住宅の空室率が増加している現在の日本の傾向を考える限り、今後常に満室をキープし続けることができると考えるのは、あまり現実的ではありません。
特に最近では、安い分譲マンションや大手不動産会社の手がけた耐震性やデザイン性に優れたマンションなども多くありますので、多方面にライバルがいると考えるべきでしょう。

実際に当事務所(岡野雄志税理士事務所)でも賃貸物件をお持ちになっているお客さまが相談に来られるケースはよくあります。あるお客さまの場合、ハウスメーカーに節税になるといわれ、賃貸物件を建てたはいいものの、その立地は都心から離れていて駅からも遠く、なかなか借り手がつかず困っている状態でした。お客さまにハウスメーカーから営業時に提示された収支計画書を見せていただくと、やはり所得税や住民税といった税金が抜けており、十分な資金計画に基づいたものとはいい難い内容でした。賃貸物件に適していない立地において、常に満室であるという前提で収支計画書を出すのは現実的ではありません。

ためしに大手賃貸情報サイトなどが提供している「地域別の空き家情報」をご覧になっていただくと、多くの地域(特に郊外など)で、賃貸需要が減少していることが瞬時にわかると思います。実際に総務省統計局が平成25年度に行った調査でも、全国空き家の5割以上が賃貸用の住宅と出ていました。それだけ賃貸物件は余ってしまうほど供給されているのです(図1)。

図1 全国の空き家の内訳

全国の空き家の内訳

賃貸物件における「満室」という状態は、相続税節税にも賃貸経営にも影響があります。
まず相続税節税の点においては、空室率が低ければ低いほど評価額が下がります。つまり、空室が多ければ、土地および家屋の評価額があまり減額されず、十分な節税効果が見込めない可能性があるのです。また、賃貸経営においては、最初に提示された利回りで計算している場合、計画通りの借金返済ができなくなる可能性があります。
思うように住人が入らなければ、賃貸収入は得られず、借金返済に資金が回らなくなります。最悪、破産する可能性だってあるのです。

「家賃保証」も万全ではない

家賃問題に関しては、不動産業者との「家賃保証」でどうにかなると考えている方も多くいらっしゃいます。「家賃保証」とは、20~30年の間、不動産会社が賃貸物件の一定の家賃を保証するシステムのことですので、一見安心に思えるのは確かです。

しかし、このシステムも絶対に安全であるとはいえません。保証額や契約期間などは業者によってまちまちですが、重要なのは多くの場合、その保証期間に「契約更新」が含まれているという点です。
つまり、保証額が契約更新の際に下がる可能性があり、最悪の場合、契約更新ができずに家賃保証自体なくなることもあり得るのです。実際、家賃収入の減少によって生活が困窮し、借金を返済できずに破産してしまった例などもあるので注意が必要です。

まとめ

賃貸経営にはたしかに大きな節税効果がありますが、その一方で大きなリスクをはらんでいます。もしもハウスメーカーなどの業者に、相続税対策としての賃貸経営を勧められた場合には、まずはその賃貸経営は本当に必要なのか、ご自身で考えてみる必要があります。

大切なのは目先の利益にとらわれず、自分の資産をどう残していきたいのか、自分の資産に合った運営方法は何なのかを追求することです。必要であれば、専門的な知識のある税理士に相談してみると良いでしょう。
大事な財産のことですから、焦らず、正しい知識を身につけて相続に備えましょう。

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