【田舎の土地を相続】特定空家等の指定や相続後の売却を解説

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「田舎の実家」を相続

進学や就職を機に子どもたちが都会へ出てしまい、年老いたご両親のみが暮らす実家。介護や看護の心配はもちろんのこと、その後、ご両親が他界され、住む人がいなくなった遠方の実家をどうするか。多くの相続人を悩ませる問題です。特にこのコロナ禍、管理が困難になった空き家を売却した事例をご紹介します。

田舎の土地を相続したが遠隔地のため管理もできず…

遠方にある、亡くなった両親が住んでいた実家。相続人全員が相続放棄してしまい、持ち主のいない空き家となるケースもあります。

幸いなことに、これからご紹介する事例では、次男であるFさんが実家の相続を受け入れました。ご両親がご存命の間も、家族で月に一度は実家を訪れ、ご夫婦ともに長閑な環境が気に入っていました。また、幼いお子さんたちも「ジィジとバァバの家」が大のお気に入りでした。

ご存じのように、数年程前から古民家がブームとなっています。Fさんの実家もかなり年季の入った木造家屋でしたが、修繕すれば何とか週末の家として使えそうです。奥様も、お子さんたちも、休日は庭で畑づくりなどして、田舎で古民家暮らしするのを楽しみにしていました。

また、都道府県や市町村によっては、毎月1泊2日以上居住するセカンドハウスなら、固定資産税や都市計画税などの軽減措置が受けられます。Fさんの実家もこうした自治体にありましたので、「家屋の利用状況に関する申告書」を役場に提出し、毎年申告するつもりでした。

ところが、このコロナ禍です。

新型コロナウイルス感染拡大防止のため、緊急事態宣言が発出され、都道府県をまたいでの移動ができなくなってしまいました。そのうえ、接客業のパートをしていた奥様が雇用契約の終了を言い渡され、F家の家計はひっ迫。実家の修繕や管理も行き詰まってしまったのです。

特定空家等の指定で固定資産税が6倍に!?

政府は新型コロナウイルス感染症拡大を踏まえた緊急事態宣言に伴い、「テレワークによる出勤者7割減」の目標を掲げています。また、巷では、テレワーク(リモートワーク/在宅勤務)で働く場所の制限が解かれ、地方への移住を望む人が増えているともいわれています。

しかし、実態はどうでしょうか。

コロナ禍におけるテレワーク導入・実施に関しては、省庁をはじめ、各関係機関で実態調査が実施されています。しかし、最近のニュースリリースなどを見ても、テレワーク実施率は正社員で約25%、非正規に至っては16%程度にとどまっています。

Fさんの職場も、これを機に全員テレワークに切り替えようとの方針にはなりませんでした。生活費や子育て環境を考慮すると、いっそ実家に転居しようかとも考えましたが、現実的にはそう簡単にはいきません。生活していくには、周辺の地域で職を得ねばならず、ただでさえ求人数の少ない地方、しかも、このコロナ不況下です。

また、総務省統計局『平成30年住宅・土地統計調査住宅数概数集計 結果の概要』によると、全国の空き家は846万戸と過去最高となっています。都道府県別に見ると下表のようになっていて、都市部及び周辺ベッドタウンは空き家率が低く、逆に空き家率が高い県には別荘やセカンドハウスに人気の地域も入っています。

都道府県別空家率表(平成25・30年)出典:総務省統計局 平成30年住宅・土地統計調査 住宅数概数集計 調査の結果『結果の概要』

このままでは、実家も放置空き家になってしまうと、Fさんは頭を抱えました。平成27(2015)年に「空家等対策の推進に関する特別措置法」が施行され、倒壊の危険や防犯・衛生・景観上の問題がある空き家・空き地を放置すると、「特定空家等」に指定される可能性があります。

「特定空家等」に指定されてしまうと、セカンドハウスの軽減措置どころではありません。人が居住するための家屋が建つ敷地、つまり住宅用地には、税金が軽減される特例措置がありますが、それも適用できなくなってしまいます。

例えば、Fさんの実家の敷地が200平方メートル以下の小規模住宅用地であれば、200平方メートルまでの部分の固定資産税が1/6に減額されます。ところが、特例措置を適用できなくなることで、逆に言えば、6倍の固定資産税を毎年払わなければいけなくなるのです。

さて、どうしたものか。ご自身で申告・納税するつもりだったFさん夫妻ですが、ここはやはり専門家である税理士の知恵を得ようということになったのです。

田舎の土地を相続してから売ることは可能?

相続財産が遠方にある実家の場合、相続人として考えられる主な対処方法は以下の5つです。

(1) 相続放棄または財産放棄(遺産放棄)する

相続放棄とは、相続財産に対する一切の権利を放棄すること(相続発生から3ヵ月以内に家庭裁判所へ申請が必要)。財産放棄とは、相続人の話し合いで本人が遺産配分を放棄すること。相続人全員が放棄した場合、相続財産の管理人選任を要し、管理人が決まるまで相続人の「管理義務」は続きます。なお、相続財産管理人の選任は家庭裁判所に申し立てが必要となります。

(2) 自ら居住する

セカンドハウスとして利用するというのも、この方法です。しかし、Fさんのように予期せぬ事態により、遠隔地のため居住や管理が困難になり、空き家化する可能性もあります。

(3) 管理を委託する

空き家となった実家近隣に管理を依頼できる親戚や知人がいればよいのですが、いない場合は不動産会社やセキュリティ会社の「管理委託サービス」を利用することになります。もちろん、有料ですので、それなりの費用を要します。

(4) 賃貸にする

相続前に賃貸にしていれば、自用地ではなく貸付宅地となるので土地評価が下がり、節税できる可能性もありました(ただし、自用地として「小規模宅地等の特例」を適用したほうが良いケースもあります)。しかし、建て替えや修繕、維持管理の費用がかかりますし、都市部ならともかく、賃借人を見つけるのも困難です。

(5) 売却する

不動産を売って売却益が出れば、譲渡所得税が課せられます。相続不動産にしても同様です。しかし、被相続人(亡くなった方)の居住用財産(空き家)の場合、譲渡所得の特別控除の特例が適用でき、譲渡所得から最高3,000万円まで控除可能です。特例の要件は以下となります。

平成28(2016)年4月1日~令和5(2023)年12月31日の間に売却されたこと

昭和56(1981)年5月31日以前に建築されたこと

区分所有建物登記がされている建物でないこと

相続開始の直前に被相続人以外の居住者がいなかったこと

売却先が第三者であること

売却金額が1億円以下であること

売却物件は被相続人の居住家屋とその敷地等であること、または被相続人の居住家屋を取り壊した後の敷地等であること

同一の被相続人から相続した家屋または敷地の売却について、この特例を受けるのは初めてであること

※詳しくは国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」をご覧ください。

また、Fさんの実家はまだ「特定空家等」に指定された訳ではありませんので、小規模住宅用地の特例が適用でき、固定資産税の減額が可能です。

「田舎だし、古いし、あの実家が売れるでしょうか?相続税の申告・納税は相続発生から10ヵ月以内ですよね…」と、Fさんは不安そうでした。しかし、コロナ禍がいつ収まり、実家でいつ過ごせるようになるかわかりません。Fさんは決心され、実家の売却先を探し始めました。

最近では、古民家専門の買い取り業者や不動産業者もあるようです。ちなみに、古民家とは、一般的に建築後50年経過した建物とされていて、確固とした基準がある訳ではありません。一般社団法人 全国古民家再生協会では、昭和25(1950)年の建築基準法制定時にすでに建てられていた伝統工法による「伝統的建造物の住宅」と定義しているそうです。

現在、新型コロナウイルスによる相続税の申告・納付は期限延長が可能です。しかし、Fさんは「あまりいつまでも相続税のことを引きずりたくないので」と、相続発生から10ヵ月の期限までに相続税の申告・納税を行いました。令和5(2023)年末までにFさんの実家が売れれば、譲渡所得税の3,000万円控除も受けられる可能性があります。

今、Fさんのもとには、地方の空き家をサテライトオフィスに活用したい食品会社と、古民家カフェとしてリノベーションできる空き家を探す地元若者グループから問い合わせが入っているそうです。Fさんの実家が、良き購入者に巡り合えることを私たちも心から祈ります。

当記事は、幻冬舎ゴールドオンラインでも取り上げられています。

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「土地を相続する手続き」親子兄弟で揉めないために。

「不動産の相続」現金で相続税を払えない場合の対策方法

 

押さえておきたい相続税の知識

申告までの期限が短く、税務調査率が高く、納め過ぎが多い税金です

  • ①被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内に申告が必要。
  • ②5件中1件が税務調査され、9割近い確率で追徴課税が発生している。
  • ③過大な財産評価や特例適用の見落としが原因で、8割が納め過ぎです。
  • ①被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内に申告が必要。
  • ②5件中1件が税務調査され、9割近い確率で追徴課税が発生している。
  • ③過大な財産評価や特例適用の見落としが原因で、8割が納め過ぎです。
  • 相続税申告の期限が短い上に税務調査率が高いことが理由で、たとえ税理士でも安全に過大に申告させてしまうのが相続税です。
    払い過ぎの場合、税務署は指摘しません。払い過ぎたことを相続人は気づかないままです。

    相続税申告を税理士に依頼するか迷われている方はこちらの記事を参考にしてください。

    特に不動産・土地を相続する方はご注意ください

    相続税は、累進課税方式です。つまり、受け継ぐ相続財産が多くなるほど負担が増える仕組みになっています。
    そのため、不動産などの相続財産を、税理士がどう評価するかで、支払う相続税額が大きく変わってくるのです。

    当税理士法人は、国内トップクラスの相続税の還付実績で培った知識と経験から、1つ1つの土地に適した評価を早く正確に行います。
    こうした適正な土地評価が、大きな相続税の節税につながります。

    今後の相続に備えたい方、相続が発生した方は、遠慮なく当税理士法人にご相談ください。
    初回の面談相談(約1時間)を無料にて実施しております。オンラインに対応しているので全国どこでも、海外からでもご相談、ご依頼いただけます。

    相続税専門の岡野雄志税理士
    この記事の監修者
    相続税専門の岡野雄志税理士

    岡野相続税理士法人
    代表税理士 岡野 雄志

    税理士・行政書士
    1971(昭和46)年生まれ
    千葉県成田市出身
    千葉県立佐倉高等学校卒業
    早稲田大学商学部卒業

    岡野相続税理士法人
    代表税理士 岡野 雄志

    税理士・行政書士
    1971(昭和46)年生まれ
    千葉県成田市出身
    千葉県立佐倉高等学校卒業
    早稲田大学商学部卒業

    相続税を専門に取り扱う税理士法人の代表。 2001年、30歳で税理士試験合格。 2005年、34歳の時に、相続税専門の税理士事務所(現・岡野相続税理士法人)を開業。 個人事業時代に、1,900件以上、累計154億円の相続税還付に成功し、日本一の実績を立てる。 2022(令和4)年に税理士法人化。 新横浜、東京駅、新宿の3拠点にて営業している。 特に土地の評価を得意とし、不動産相続の実績は業界でもトップクラス。

    現在までに累計3,000件、200億円の相続税還付に成功する。 全国各地の相続税申告・還付を累計5,904件(2026年3月末時点)以上手掛ける。 著書に『土地評価に強い税理士に頼んだら相続税がビックリするほど安くなりました』(岡野雄志/舟田浩幸 著、株式会社あさ出版刊)、「相続税専門税理士が教える 相続税の税務調査完全対応マニュアル(幻冬舎刊)」など6冊。 相続税関連の執筆や各種メディアから取材実績として、「週刊ダイヤモンド」「週刊現代」等。 ウェブメディア「ダイヤモンドオンライン」「幻冬社ゴールドオンライン」など多数。

    相続税を専門に取り扱う税理士法人の代表。
    全国各地の相続税申告・還付を累計5,904件(2026年3月末時点)以上手掛ける。
    特に土地の評価を得意とし、不動産相続の実績は業界でもトップクラス。
    相続税関連書籍の執筆や各種メディアから取材実績多数有り。

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