「相続税還付と配偶者居住権」小規模宅地の併用も可能です

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相続税専門の税理士。創業16年で国内トップクラス1,690件の相続税の申告実績。119億円以上の相続税の減額実績。
岡野雄志税理士
岡野雄志税理士
相続税還付と配偶者居住権

令和2(2020)年4月1日施行の「配偶者居住権」。平成30(2018)年の税制改正で330平米まで面積が広がった「小規模宅地等の特例」。どちらも不動産評価に用いると用いないとでは、相続税の課税額に大きな差が出ます。併用も可能で、特に二次相続で節税効果が期待できます。今回は相続時精算課税によるトラブルを解決した事例をご紹介します。

節税対策のための生前贈与のはずが…

皆さまは「たわけもの」という言葉をご存じでしょうか?漢字で「田分け者」と書きます。封建時代、跡取り以外の子どもにも平等に田を分けると、孫、ひ孫と受け継ぐにつれ面積が狭まって収穫量が減り、家が衰退するという意味が込められているようです。

封建的な家督相続制度は、昭和22(1947)年の民法改正で廃止されました。現在の民法では、配偶者や長子以外の子どもにも平等に遺産分配されることになっています。それでも、いまだに長男を後継ぎとする考え方が根強く残る地域もあります。

Aさんは会社勤めで、家業を営んでいる訳ではありませんでしたが、そんな長子相続的な考えが強い地域で生まれ育った方です。また、Aさんの息子さんは、上の娘さんと歳を隔てて生まれた男の子でもあり、つい長男、長男とおだてて育てがちでした。

その息子さんも就職後、実家を離れて暮らしていましたが、あろうことか株式投資で失敗して多額の損失を抱えてしまいました。泣きつかれたAさんはいろいろ考えた末、相続時精算課税を選択し、息子さんに現金を生前贈与することに決めました。

父親の急逝で相続税が払えなくなった息子

ここで、相続時精算課税制度について、改めて確認しておきましょう。「相続時精算課税制度」とは、受贈者(このケースではAさんの息子さん)が2,500万円までなら、贈与税を納めずに贈与を受けることができる制度です。

ただし、贈与税を払わずに済むといっても、納税を免れることができる訳ではありません。贈与者が亡くなった際には、贈与時の財産価額と相続財産の価額を合計した金額から相続税額を計算し、一括して相続税として納税しなければいけません

相続時精算課税制度について詳しくは、国税庁サイトの『No.4103 相続時精算課税の選択』をご覧ください。
また、当サイトのコラム『「相続時精算課税制度」を利用した相続税対策とは?』もご参照いただければ幸いです。

そして、不幸なことに、その翌々年、年をまたがずにAさんが亡くなりました。被相続人(このケースではAさん)が亡くなる前、3年以内に行われた生前贈与は贈与と認められず、相続財産として相続税の課税対象となってしまいます。

Aさんは自筆遺言書こそ残しておられませんでしたが、終活ノートは記しておられました。それには、自宅は配偶者である奥様と息子さん半々、残りの預貯金は奥様と娘さん半々で分け、相続するようにと書かれていました。

ところが、困ったことに、息子さんは家族にも内緒で仕事を辞めて株にのめり込み、その時点で損失額がさらに膨らんでいたのです。これでは相続税どころではありません。彼は姉には相続放棄を、母には実家の売却による現金化を要求してきました。

配偶者居住権の適用で相続税を減額

驚いたのは、父と弟の間で生前贈与が行なわれていたことを知らされていなかった娘さんです。「私はすでに嫁いでいる身ですから、相続放棄だろうが、財産放棄だろうが構わないのですが、母のことが心配で」と当税理士事務所へ相談に見えました。

いったんは法定通りの分配で相続税申告された後でしたが、当事務所でAさんが遺された財産の評価額を計算しなおし、ご提案申し上げました。提案の主旨は、ご実家の不動産相続に「配偶者居住権」と「小規模宅地等の特例」を適用することです。

「配偶者居住権」は、令和2(2020)年4月1日以降に発生した相続に適用されます。亡くなった方と生活を共にされていた配偶者が、その家に住み続けることを守る権利です。配偶者が住む権利は終身(もしくは予め設定した一定期間)守られます。

Aさんのご遺志は、ご自宅を奥様と息子さんで1/2ずつということでした。「配偶者居住権」によって、建物に住む権利は奥様、土地を所有する権利は息子さんという、ある意味、視点を変えた半々の考え方ができます。

権利 今回のケースの相続人
建物 配偶者居住権 配偶者(Aさんの奥様)
居住建物の所有権 子(Aさんの息子さん)
土地 敷地利用権 配偶者(Aさんの奥様)
敷地所有権 子(Aさんの息子さん)

さらに、「配偶者居住権」は二次相続の際にこそ、節税効果を発揮します。奥様から息子さんへの相続が発生した時、「配偶者所有権」は住む権利であって所有権ではないので、相続税は課せられないのです。

配偶者居住権について詳しくは、国税庁サイトの『No.4666 配偶者居住権等の評価』をご覧ください。
また、当サイトのコラム『「配偶者居住権」で相続税を節税。デメリットについても解説。』もご参照いただければ幸いです。

「小規模宅地等の特例」は、平成30(2018)年の税制改正によって、特定居住用宅地の限度面積が330平米(特定事業用宅地の場合には440平米)に拡大されました。宅地として所有されている330平米の部分までは評価額を80%減額できます。

「小規模宅地等の特例」も、二次相続の際の相続税対策に有用です。例えば、660平米の敷地を配偶者と子が330平米ずつ相続すれば、それぞれに「小規模宅地等の特例」が適用できます。さらに二次相続で適用すれば、何千万円という単位での節税も可能です。

小規模宅地等の特例について詳しくは、国税庁サイトの『No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)』をご覧ください。
また、当サイトのコラム『2年続いた「小規模宅地等の特例」の見直しの内容を解説します』もご参照いただければ幸いです。

今、奥様と息子さんはご自宅で同居されています。その後、息子さんが株投資をどうされているかは、税理士の知る範疇ではありませんが。少なくとも、奥様と息子さんに家を相続させたいというAさんのご遺志には添えたのではないかと自負しております。

当税理士事務所は相続税の還付成功数1,326件と、全国でもトップクラスの実績を上げています。ご相談・お見積までは無料で承っておりますので、「相続税を払い過ぎかもしれない」と不安に感じられたら、どうぞお気軽にお問い合わせください。
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