【相続税が払えない】延納、物納の対処方法や滞納について解説

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相続税払えない

故人(被相続人)が亡くなり遺産を相続した場合、遺産の総額が相続税の非課税枠である「基礎控除」の範囲を超えると、相続税申告の義務が発生します。

この場合、申告期限まで(被相続人の死亡を知った翌日から10ヵ月以内)に申告とともに納税をしなければなりませんが、この際に相続税が払えないというケースに陥ることがあります。

期限内に相続税を払わないと、相続税に加え、延滞税や加算税などが課せられることにもなりかねません。そこで、今回の記事では、相続税が払えなくなる原因と相続税が払えない場合の対処の仕方、それぞれのメリット・デメリットなどについて解説します。

なぜ相続税が払えないのか?

相続税をのぞき込む
遺産を相続しているのに相続税が払えないことを、少し不思議に思う人もいるのではないでしょうか。ここでは、どんなときに相続税が払えなくなるのか、そのケースを見ていきましょう。

相続税が払えなくなるケースは、大きく次の2つのケースが考えられます。

相続した財産のなかに相続税を支払う現金がない

相続する財産の種類には、大きく2種類があります。

  • 「換価(現金化)が容易な財産」・・・金融資産(現金・預貯金など)や株式(上場株式・投資信託等)、保険など
  • 「換価(現金化)が難しい財産」・・・不動産(土地や建物)などの

相続財産のうち約3割程度を占める不動産ですが、相続財産が不動産だけの場合、相続財産のなかから相続税を支払うことができません。

そのため、相続人自身の預貯金から支払わなければならなくなるわけですが、このお金が用意できないというケースがあります。

遺産分割協議がまとまらず預貯金が凍結されている

被相続人が亡くなり相続が発生した時点で、現金をはじめ遺産はすべて法定相続人の共有財産となります。被相続人の預貯金については、被相続人の死亡後、金融機関に連絡して被相続人の預貯金口座を凍結させるため、相続人が勝手に利用することはできません。

相続人全員で遺産分割協議を行い、現金を相続することになったとしても、協議がまとまらないことには被相続人の口座凍結を解除することができず、相続税が払えないというケースがあります。

相続税が払えないときの対処法(延納、物納)

相続税が払えない場合の対処方法は、以下6つの方法があります。

  • 相続財産を現金化する
  • 相続財産を分割して払う(相続税の延納)
  • 相続財産を現金ではなく物で納める(相続税の物納)
  • 納税する金額分だけを先に分割協議(一部分割)を行う
  • 相続を放棄する
  • 金融機関から借りたお金で支払う

それぞれの方法のメリットデメリットは以下の通りです。

相続財産を現金化する

例えば、相続する財産が不動産などで手元に相続税を払うための現金を用意できない場合、相続財産を売却して現金に換金するという方法があります。この場合、相続人全員で遺産分割協議を行い、売却する相続財産を相続する人について協議がまとまっていることが条件となります。

換価分割とは?

換価分割とは、不動産や株を1人が代表して相続し、売却後に現金で分けることをと言います。
不動産を共有で相続したり、株をそれぞれの人が、相続した後で売却する場合は、換価分割ではありません。

現金化するメリット

現金化するメリットは、不動産や株式などさまざまな財産をすべて現金に置き換えることで、相続税などが支払えるほか、他の相続人と財産をわかりやすく分配できることが挙げられます。

現金化するデメリット

相続財産を現金化するデメリットは以下の通りです。

  • 不動産はいつ売れるかわからない
  • 値段が時期によって変動するため思った金額にならない
  • 譲渡所得の申告が必要になることがある

不動産を売却するときの注意点

不動産を売却する場合、まずは不動産の名義を被相続人から相続人に変更するなどの手続きが必要になります。手続きが済み次第、不動産業者に売却を依頼する流れとなりますが、依頼したからといってすぐ売却できるかどうかはわかりません。

相続税を払う期限まで日数が少ないと、焦って希望する額よりも安く売却せざるを得ないということになりかねませんので、売却するときはできるだけ早く行動することが大切です。

相続財産を分割して払う(相続税の延納)

相続した財産を手放したくないという方には、相続税を最大で20年にわたって分割で支払うことができる「相続税の延納」という制度があります。

相続税を延納するには、以下のすべての要件をクリアしなければなりません。延納が認められた場合、延納した税額を延納する期間で割った額を毎年支払います。

延納の要件

  • 相続税額が10万円を超えること。
  • 金銭で納付することを困難とする事由があり、納付を困難とする金額の範囲内であること。
  • 延納額および利子税の額に相当する担保を提供すること。ただし、延納税額が100万円以下で、かつ延納期間が3年以下である場合には担保を提供する必要はありません。
  • 延納申請にかかわる相続税の納期限または納付すべき日(延納申請期限)までに、延納申請書に担保提供関係書類を添付して税務署長に提出すること。

参考:国税庁HP 相続税の延納

延納のメリット

延納のメリットは、一度に高額の相続税を払わず少しずつ分割で納付できる点にあるといえます。

延納のデメリット

いっぽうデメリットとして、延納している期間は延納税額に「利子税」がかかることが挙げられます。利子税は相続財産に占める不動産の割合や、延納期間によって税率が異なります。

区分 延納期間 利子税
不動産などの割合が75%以上の場合 ①不動産などに対応する税額(②を除く) 20年 3.6%
②森林計画立木の割合が20%以上の場合の森林計画立木に対応する税額 20年 1.2%
③動産などに対応する税額 10年 5.4%
不動産などの割合が50%以上75%未満の場合 ④不動産などに対応する税額(⑤を除く) 15年 3.6%
⑤森林計画立木の割合が20%以上の場合の森林計画立木に対応する税額 20年 1.2%
⑥動産などに対応する税額 10年 5.4%
不動産などの割合が50%未満の場合 ⑦一般の延納相続税額(⑧⑨⑩を除く) 5年 6.0%
⑧立木の割合が30%を超える場合の立木に対応する税額(⑩を除く) 5年 4.8%
⑨特別緑地保全地区内などの土地に対応する税額 5年 4.2%
⑩森林計画立木の割合が20%以上の場合の森林計画立木に対応する税額 5年 1.2%

延納するときの注意点

「申請にかかわる相続税の納期限または納付すべき日(延納申請期限)までに、延納申請書に担保提供関係書類を添付して税務署長に提出すること」と要件にもあるように、延納は相続税の申告期限までに申請の手続きを行う必要があります。

相続財産を現金ではなく物で納める(相続税の物納)

実は相続税の納税には、不動産などの相続財産をそのまま相続税として納めることができる「相続税の物納」という制度があります。
相続税を物納するには、以下のすべての要件をクリアしなければなりません。

物納の要件

●延納によっても金銭で納付することを困難とする事由があり、かつ、その納付を困難とする金額を限度としていること。
●物納申請財産は、納付すべき相続税額の課税価格計算の基礎となった相続財産のうち、次に掲げる財産および順位(①から⑤の順)で、その所在が日本国内にあること。
第1順位
①国債、地方債、不動産、船舶
②不動産のうち物納劣後財産に該当するもの
第2順位
③社債、株式(特別の法律により法人の発行する債券および社債証券を含む)、証券投資信託または貸付信託の受益証券
④株式(特別の法律により法人の発行する債券および社債証券を含む)のうち物納劣後財産に該当するもの
第3順位
⑤動産
●物納に充てることができる財産は、管理処分不適格財産に該当しないものであること(物納劣後財産に該当する場合には、他に物納に充てるべき財産がないこと)。
●物納しようとする相続税の納期限または納付すべき日(物納申請期限)までに、物納申請書に物納手続き関係書類を添付して税務署長に提出すること。参考:国税庁HP 相続税の物納

物納のメリット

物納の場合、不動産や株式などの価値は相続税評価額として評価され、その評価額をそのまま相続税に充てることになるため、相続税としていくら支払うか、容易に計算することができます。
また、譲渡所得税が非課税なので、税金を抑えることが可能です。

物納のデメリット

物納で納める財産は相続税評価額で評価されるため、不動産の場合は時価より低い金額で評価されることになります。
また、測量が必要なので、測量費がかかることもあります(物納が却下されても測量費用は返却されません)。

物納するときの注意点

「物納しようとする相続税の納期限または納付すべき日(物納申請期限)までに、物納申請書に物納手続き関係書類を添付して税務署長に提出すること」と要件にもあるように、物納は相続税の申告期限までに申請の手続きを行う必要があります。

納税する金額分だけを先に分割協議(一部分割)を行う

相続する財産の中に預貯金があっても、他の相続人たちと遺産分割協議を行わないことには、口座の凍結を解除することができません。遺産分割協議ではなかなか話し合いがまとまらず、長期化することも…。

そこで有効なのが遺産の一部分割です。遺産分割は相続する全財産を一度に遺産分割しなければならないわけではなく、全相続人の同意があれば一部のみを分割することも可能です。ひとまず納税に必要な金額分(相続財産の一部)について遺産分割協議を行うことで、口座の凍結を解除することができます。

一部分割のメリット

遺産分割でなかなか話し合いがまとまらないときでも、それぞれ相続人が相続税として納税する分だけを一部分割することで、申告期限までに相続税額を用意することが可能です。

一部分割のデメリット

一部分割を行ったとしても、まだ残りの遺産について分割協議を行う必要があり、要は問題が先送りにされたに過ぎません。

注意したいのは、先に行った一部分割をどう反映させるかということで、なかには残りの遺産を分割する際、先の一部分割が無効となるケースもあります。
また、不動産を一部分割するケースは、親(被相続人)と同居していた相続人が自宅を当該不動産として先に一部分割した時、そこには居住できなくなるといったことがデメリットに挙げられます。

相続を放棄する

相続税を支払うお金を用意できない場合には、相続放棄という方法もあります。

相続放棄のメリット

相続放棄をすれば、相続税の支払いをする必要がありません。相続する財産の中には借金などマイナスとなる財産もあるので、そうしたときには有効な手段といえます。また、相続放棄をした場合、相続人ではなくなるため、相続の揉め事などにもかかわらずに済むようになります。

相続放棄のデメリット

相続放棄をした場合、相続財産をすべて手放さなくてはなりません。親(被相続人)と同居していた相続人が相続放棄をした場合、同居していた家も、その家で使用していた家具や家電なども勝手に持ち出すことができなくなります。

相続放棄の注意点

相続放棄は、相続が発生したことを知ってから3カ月以内に手続きの必要があります。

金融機関から借りたお金で払う

ほかにも、相続税が支払うお金がない場合、金融機関から借りて払うという方法があります。
メリットとしては、金融機関次第ですが、延納の利子税よりも低い利率で融資を受けれる可能性があります。
(金融機関の審査があるので注意が必要です。)

相続税を払わないとどうなる?

相続税を払わないままにしていると、国税庁に財産を差し押さえられることになります。

一般的な差し押さえの流れは、

  1. 督促状が届く
  2. 税務署から電話がくる
  3. 最終督促状が届く
  4. 差押予告通知書が届く
  5. 差押調書が届く差押え

となります。

差し押さえられるのは主に不動産ですが、お金や家具などの動産も差し押さえられるケースもあります。

相続税の支払い期限は申告と同様に、相続発生(被相続人の死亡を知った翌日)から10ヵ月です。申告期限までに申告を行わなかった場合や、申告すべき税額に対して不足があった場合などは、さまざまな「加算税」が課せられます。

加算税の種類

無申告加算税

自覚なく申告をしていなかった場合に課せられます。

過少申告加算税

自覚なく過少の申告をしていた場合に課せられます。

重加算税

納税義務の自覚がありながら、相続財産を隠ぺいもしくは虚位の申告をした場合に課せられる、最も重い加算税です。

また、正しく申告をしていても納税が遅れた場合は、別途「延滞税」が課せられます。

延滞税は期限から延滞する期間が長いほど金額がかさんでいきます。また、2ヵ月を境に延滞税の税率が変わるのでご注意ください。

延滞税の税率

  • 支払い期限の翌日から2ヵ月を経過する日まで年7.3%。または、特例基準割合+1%の低い割合。
  • 納期限の翌日から2ヵ月を経過する日の翌日以降年14.6%。または 特例基準割合+7.3%の低い割合。

※特例基準割合は、財務大臣が年に一度告知する割合に基づいて決定します。

まとめ:相続税が払えないとき

  • 相続税が払えないときは、「財産の現金化」「相続税の延納・物納」「一部分割」「相続放棄」などの対処法がある
  • 延納は最大で20年にわたって分割払いできるが「利子税」がかかる
  • 物納は財産の相続税評価額をそのまま相続税に充てることができる
  • 相続放棄をすると相続人ではなくなるため、相続税の支払いをする必要もなくなる
  • 相続税を払わないと、加算税や延滞税などが課せられる

押さえておきたい相続税の知識

申告までの期限が短く、税務調査率が高く、納め過ぎが多い税金です

  • ①被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内に申告が必要。
  • ②5件中1件が税務調査され、9割近い確率で追徴課税が発生している。
  • ③過大な財産評価や特例適用の見落としが原因で、8割が納め過ぎです。
  • ①被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内に申告が必要。
  • ②5件中1件が税務調査され、9割近い確率で追徴課税が発生している。
  • ③過大な財産評価や特例適用の見落としが原因で、8割が納め過ぎです。
  • 相続税申告の期限が短い上に税務調査率が高いことが理由で、たとえ税理士でも安全に過大に申告させてしまうのが相続税です。
    払い過ぎの場合、税務署は指摘しません。払い過ぎたことを相続人は気づかないままです。

    相続税申告を税理士に依頼するか迷われている方はこちらの記事を参考にしてください。

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    相続税専門の岡野雄志税理士
    この記事の監修者
    相続税専門の岡野雄志税理士

    岡野相続税理士法人
    代表税理士 岡野 雄志

    税理士・行政書士
    1971(昭和46)年生まれ
    千葉県成田市出身
    千葉県立佐倉高等学校卒業
    早稲田大学商学部卒業

    岡野相続税理士法人
    代表税理士 岡野 雄志

    税理士・行政書士
    1971(昭和46)年生まれ
    千葉県成田市出身
    千葉県立佐倉高等学校卒業
    早稲田大学商学部卒業

    相続税を専門に取り扱う税理士法人の代表。 2001年、30歳で税理士試験合格。 2005年、34歳の時に、相続税専門の税理士事務所(現・岡野相続税理士法人)を開業。 個人事業時代に、1,900件以上、累計154億円の相続税還付に成功し、日本一の実績を立てる。 2022(令和4)年に税理士法人化。 新横浜、東京駅、新宿の3拠点にて営業している。 特に土地の評価を得意とし、不動産相続の実績は業界でもトップクラス。

    現在までに累計3,000件、200億円の相続税還付に成功する。 全国各地の相続税申告・還付を累計5,904件(2026年3月末時点)以上手掛ける。 著書に『土地評価に強い税理士に頼んだら相続税がビックリするほど安くなりました』(岡野雄志/舟田浩幸 著、株式会社あさ出版刊)、「相続税専門税理士が教える 相続税の税務調査完全対応マニュアル(幻冬舎刊)」など6冊。 相続税関連の執筆や各種メディアから取材実績として、「週刊ダイヤモンド」「週刊現代」等。 ウェブメディア「ダイヤモンドオンライン」「幻冬社ゴールドオンライン」など多数。

    相続税を専門に取り扱う税理士法人の代表。
    全国各地の相続税申告・還付を累計5,904件(2026年3月末時点)以上手掛ける。
    特に土地の評価を得意とし、不動産相続の実績は業界でもトップクラス。
    相続税関連書籍の執筆や各種メディアから取材実績多数有り。

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