「税務調査の実態」税理士が立会体験から教える相続税の対処法

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相続税専門の税理士。創業16年で国内トップクラス1,690件の相続税の申告実績。119億円以上の相続税の減額実績。
岡野雄志税理士
岡野雄志税理士
税務調査の実態

8~12月は税務調査シーズン。
実地調査が税目中最も高確率とされる相続税(平成30年度で約10%・10人に1人の割合)。相続税専門の税理士が豊富な立会体験から税務調査の実態と対処法をお教えします。
準備書類チェックリスト、当日よくある質問集、税務調査官の逆調査方法、税理士立会のメリットや費用など。ご自分で相続税申告された方、必見です。

「税務調査の実態」相続税の場合

国税庁の令和2事務年度が7月からスタートし、10月1日から訪問による税務調査も再開されました。
今年は新型コロナウイルス感染拡大防止のため、計算間違いなどの単純な申告誤りの場合は、文書や電話による調査も行われているようです。

とは言え、令和元(2019)年12月に国税庁が公表した『平成30事務年度における相続税の調査等の状況』によると、相続税の実地調査(訪問調査)の件数は12,463件。このうち申告漏れ等の非違があった件数は10,684件で、実に85.7%という割合となっています。

平成30事務年度の文書や電話による簡易な接触の件数は10,332件。このうち申告漏れ等の非違及び回答等があった件数は5,878件で、割合は56.9%となっています。

この実態を鑑みると、相続税の場合、申告漏れは実地調査で9割弱、文書や電話による調査でも6割近くがあぶり出されています。
実地調査であろうと、簡易接触であろうと、税務調査は今年もやはり厳しく執り行われると考えるべきでしょう。

税務調査当日までの準備チェックリスト

すでに税務署から、税務調査の事前連絡(事前通告/事前通知)が入っている方もいらっしゃるかもしれません。
また、まだ通知の電話がないからと油断してもいけません。

相続税の修正申告は5年以内となっていますから、相続税の申告期限から少なくとも5年間は気が抜けません。
申告漏れにお気づきの方は自ら修正申告を、無申告の方はすぐにでも申告手続きされることをおすすめします。

では、事前調査があった方はもちろん、税務調査の不安がある方も、当日までに何を準備したらいいのでしょう?
一覧表のチェックリストにしましたのでご活用ください。用意できているものには、印を記入しておくと便利です。

税務調査の当日までに
用意しておくもの
チェック
相続税申告書(本人控)
相続税申告書の
添付資料(本人控)
相続税申告書作成の際に
使用した計算根拠となる資料
土地・不動産に関する資料
準確定申告している場合は
申告書(本人控)
被相続人(亡くなった方)
の預貯金通帳・印鑑
相続人の預貯金通帳・印鑑
被相続人の有価証券
被相続人の保険証券
被相続人の年金関係書類
贈与契約書
相続人の家計簿や手帳
・電話帳
葬儀時の香典帳
・葬儀費用の明細書など
ゴルフ会員権や
リゾート会員権などの契約書
貴金属店や美術品
などの領収書
「相続税についてのお尋ね」
(本人控)※提出している場合
その他(            )

このほかにも、遺産関係の書類や相続人の資産に関する書類がありましたら、用意しておきます。要するに、相続税申告した時の書類、被相続人と相続人の資産に関する書類はすべて用意しておくということです。

税務調査官に必ず尋ねられる質問集

訪問による税務調査は、通常、午前10時頃から始まり、午前中は質疑応答、午後は現物確認となります。税務調査官(税務署職員)は公務員ですので、接待は原則禁止されていますから、お茶やお菓子、昼食などを用意する必要はありません。

訪問の際、初めに税務調査官が身分証明書を提示します。近頃では「アポ電強盗」などという犯罪も横行し、税務調査官のなりすましにも気を付けなければいけません。事前通知が来た際に、管轄の税務署に確認しておく慎重さも必要でしょう。

質疑応答はたいてい和やかな雑談から始まります。しかし、この世間話のような会話にも調査目的の質問が隠されています。税務調査官からのよくある質問をピックアップいたしましたので、心構えとしてご参照ください。

「暑いですね」「寒いですね」

まずは、季節の挨拶から始まるのが通常です。アイスブレイクとして相続人の気持ちをリラックスさせて、喋りやすくするのが目的です。

「良いお住まいですね」「駅から近いんですね」「立派なお庭ですね」

ご自宅で税務調査が行われる場合、このように住まいを褒められると誰しもうれしいものです。しかし、このような会話には、不動産や庭園設備などに隠し財産が含まれていないかどうかの調査が含まれています。

「被相続人が他界されたのは〇年〇月〇日でしたね。亡くなった原因は?」

被相続人の死亡時の状況、入院先、意思決定能力があったかどうか、死亡直前の贈与の有無などが質問されます。被相続人ではなく、「ご主人」「お父様」「お母様」…などの言葉を使い、関係を確かめられることもあります。

「被相続人を最期まで介護されたのはどなたですか?」

法定相続人以外に看護や介護をした人に、相続財産が渡っていないかどうかを確かめるための質問です。被相続人の交友関係も訊かれます。愛人や隠し子といった、ほかの相続人がいたことが発覚するケースもあるからです。

「生活費はどなたが捻出されていましたか?」

被相続人の職業・職歴や事業についても確認されます。「被相続人が亡くなられた後、どうやって生計を立ててらっしゃるのですか?」と、相続人の事業や職歴、資産状況も確かめられます。

「被相続人のご趣味は何でしたか?」

ゴルフが趣味であればゴルフ会員権、旅行が趣味であればリゾート会員権、アートが趣味であれば美術品や骨とう品収集…といった、相続財産の申告漏れがないかどうかを確かめる質問です。

「ご実家の状況を教えてください。ご実家から相続はありましたか?」

相続人が配偶者や他家へ嫁いだ子の場合にされる質問です。相続人の蓄財能力(預貯金があるかどうか)をチェックするのが目的です。

「被相続人と相続人の取引銀行、取引証券会社を教えてください」

申告から漏れている預貯金、株式や有価証券がないかどうかをチェックするためです。税務調査官が銀行や証券会社から取引明細を取り寄せ、場合によっては担当者から詳しい話を聞くこともあります。

「あなたの預金はどなたが管理されていたのですか?」

相続人の預金を被相続人が管理していたのであれば、それは「名義預金」と見なされます(相続人自身が賃金などとして得た所得は除く)。名義預金とは、いわば名義を借りているに過ぎない、実質的には被相続人の預金ということになります。

また、被相続人の預貯金を相続人が管理している場合、入出金は被相続人以外が行っていたのではないか、預貯金がどこに流れているかも問われます。

税務調査で最も指摘されやすい相続税のかかる遺産です。

「保有されている賃貸不動産の賃料はどうやって回収していますか?」

現金または振込による集金か、管理会社についても訊かれます。現金集金の場合、未収家賃が申告漏れしていることもあるからです。

「重要書類の保管場所はどこですか?」

金庫や書庫の中など、現物を調査されます。いわゆるタンス預金などがあれば、それも調べられます。鏡台や下着の入っている引き出しの中など、よほどプライバシーを侵害される箇所ならともかく、現物調査は拒否できません。

現物調査は1時間の昼休憩をはさみ、たいてい午後になりますが、調査官は相続人と一緒に昼食を取ることはできませんので、外へ食事に出かけます。戻ってきて「トイレを借りたい」と言われたら、トイレに掛けてある金融機関のカレンダーなどもチェックされていると思ったほうがいいでしょう。

税務調査はほぼ1日で完了しますが、2日にわたることもあります。最後に「質問応答記録書」を読み上げて、サインを求められることがあります。任意ですから、「現時点では署名捺印いたしません。税務調査終了時に勘案させてください」と言うことができます。

納得できなければ、後で修正を交渉できます。そのためにも、当日、ご自身でも税務調査の議事録や応答集の記録を作っておくことをおすすめします。

税理士が税務調査に立ち会うメリット

税務調査当日、必ず守るべきことは「嘘をつかないこと」です。隠ぺいや故意の仮装があった場合、重加算税を課せられてしまうからです。重加算税は増えた相続税本税に対して、過少申告加算税なら35%、無申告加算税なら40%という高額な課税が賦課されます。

とは言え、税務調査官は税務のノウハウと経験を身につけたプロ、相続人は大概の場合、税務調査なんて初体験の素人です。思わぬ質問をされて慌てふためいたり、的確な答え方ができなかったりしても、むしろ当然です。

相続税法改正により、平成27(2015)年1月以降の相続から基礎控除額が引き下げられ、課税対象者は8割増となりました。そのため、税務調査当日の「税務のプロである相続人の味方」として、税理士の立会を要望される方が増えました。

税理士に立会を依頼するメリットは6つ。「申告済みの相続税の見直しができる」「事前準備がしっかりできる」「質疑応答のリハーサルができる」「税務調査官による妥当性のない質問や解釈は退けてくれる」「調査日以降の税務署とのやり取りをしてもらえ、税務官の質問応答記録書に異議申立できる」「修正申告書の作成をしてもらえる」ことです。

すでに事前通告されている方はもちろん、過去の相続税申告に不安を抱える方が相談に来られ、申告の見直しと修正申告を行った結果、むしろ還付につながったケースもあります。

税理士は調査官の職歴を逆調査する

税務調査官も人間です。百戦錬磨のベテランもいれば、税務調査が初体験というビギナーもいます。かと言って、電話してきたのが新人調査官だからと安心してはいけません。当日は、実績ある上席の調査官が同席するケースも多いからです。

税務署職員の肩書で言えば、上の立場から順に、統括調査官、上席調査官、調査官、事務官となっています。職歴としては、税務署の審理専門官や相談官などは、法律に詳しい部署で経験を積んでいることが考えられます。

税理士は、こういった税務調査官の肩書や職歴も調べ、対策を考えます。毎年発行される『税務職員配属便覧』(NP通信社刊)、『職員配属便覧』(株式会社税経刊)などを参考にします。

また、税理士や経理部門責任者の会員制度・税務研究会の会員になれば、『税務職員録データベース』も利用できます。

税務調査立会の税理士費用は

相続税の税務調査の場合、やはり相続税に詳しい税理士に依頼するのが定石です。税種によって控除や特例なども異なり、税務官の質問に対して答えるべき内容や用意するべき書類も異なるからです。

立会費用は税理士によってまちまちですが、当税理士事務所は相続税申告後のアフターケアとしてお引き受けしています。もちろん、他の税理士に依頼された相続税申告についての調査立会も承っています。

料金や詳しい内容については、以下のページをご覧ください。

税務調査への立会を税理士に相談

また、税務調査についてもっと詳しくお知りになりたい方は、平成29(2017)年12月12日に上梓いたしました『相続税専門税理士が教える 相続税の税務調査完全対応マニュアル』もぜひご一読いただければ幸いです。

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